加工の原理
魚の糠漬け(こんか漬け)の工程は大きく塩蔵と糠漬けの2つに分けられます。また、 糠に漬け込み貯蔵の際に、いしる(魚醤)を差す工程も大事です。
このうち風味付けには、特に糠漬け工程が重要であり、昔から発酵し熟成させるには 北陸特有の高温多湿の夏を経ることが必要といわれています。
糠漬けの意義
乳酸菌の働き
このようなこんか漬け(へしこ)特有の風味・香り・旨味といったものは、ぬか床に含まれる乳酸菌が魚のたんぱく質を分解して熟成が進むため、生み出されるものです。
また乳酸菌がつくる乳酸により雑菌の繁殖が抑えられ、長期保存が可能となります。
抗酸化作用
こんか漬け(へしこ)の原材料となるさばなどの青魚には、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)といった必須脂肪酸が含まれます。これらは血中の脂質濃度を下げる働きをもち、生活習慣病予防への効果が期待される注目の成分ですが、時間がたつと酸化しやすいという弱点があります。
しかし米糠に漬け込むことで、ぬかの抗酸化力が酸化を防ぎ、DHAやEPAを損なわずに長期間保存できます。
ミネラル・ビタミン・ペプチドなど
糠には、エネルギー代謝を助け皮膚などの働きを整えるビタミンB群をはじめ、各種ミネラルなどの栄養も豊富。さらに、魚をぬかに漬けると、血圧上昇を抑える効果のあるペプチドの量が増加します。(こんかの健康効果)
いしるの意義
糠漬け製造の際に用いられる差し汁としての塩蔵汁(いしる)の意義として、タンパク分解酵素の 供給としての役割が大きいと考えられています。
熟成とともにpHは5.3に低下しますが、 これは主に乳酸(約1%)、酢酸などの有機酸によるもので、糠漬けではこのような低い pHと塩蔵による高い塩分によって保存性が保たれます。
塩蔵の意義
また糠漬けの前に行われる塩蔵も重要であり、この工程で食塩が浸透し、魚肉は脱水されます。
これにより、魚肉中での腐敗細菌の増殖や自己消化の進行が抑制されます。
また肉質の硬化、 血抜きなどの効果があります。