こんかとは、魚の糠漬けのことで、数多く獲れる魚の保存方法の一つとして生まれ、現在は嗜好品として親しまれています。代表的なこんか漬けは【こんかいわし】(いわしの糠漬け)です。
このこんか漬けは、石川県ならではの珍しい発酵食品としても有名ですが、石川にはこのほか酒・醤油・大根寿司といった発酵食品がたくさんあります。これは、夏は高温多湿で冬は寒冷という北陸・金沢の気候が発酵に合っているのです。
そこで、ここでは発酵というモノの仕組みを考えていきます。
発酵とは
発酵とは、基本的には有機物(有機化合物、無機物と対分)が微生物によって分解される現象のうち、『人間にとって役に立つもの』のことです。
食べものが腐るなどの「腐敗」にも微生物は大きく関係しています。実は「発酵」と「腐敗」のしくみは同じで、両者とも微生物が有機物を分解して別の物質を作り出すのですが、異なる点は作り出される物質の差にあります。
硫化水素やアンモニアなど、人間にとって有害なものをつくりだす場合を「腐敗」、逆に乳酸菌やアミノ酸など有益なものを作り出す場合を「発酵」と呼び、人間にとって有害か否かの差・区分なのです。
発酵の特性
保存性が高くなる
発酵した食品は、その素となる食材よりも一般的に保存期間が長くなります。
個性的な味・香りを生み出す
発酵食品には、独特の味と香りがあります。
これは、微生物が有機物を分解する時、匂い成分や旨みの素となるアミノ酸類を生成することに依ります。
微生物によって生成する物質が違うため、発酵食品には個性豊かな味や香りを持つものが数多くなるのです。
体の健康に良い
有機物の分解により、より小さな分子の物質を生み出します。それにより、
・栄養素の消化吸収が良くなる
・体に有効に働きかける必須アミノ酸類やビタミン類、酵素類を作り出す
という利点があります。
発酵と微生物
発酵に関わる微生物は主として「カビ」「酵母」「細菌」の3つです。微生物は≪肉眼では見えない大きさの生物≫と定義されます。この3つの中で最も大きいのがカビで、次いで酵母、細菌の順です。微生物は地球のあらゆるところに生息しています。
カビ
カビとは、菌類の一部を指す言葉で、菌糸と呼ばれる糸状の細胞からなり、胞子によって増殖します。
胞子や菌糸が集まっているから見えるのであって、胞子だけを取り上げると、数ミクロンから数10ミクロン(1ミクロン=1/1000ミリメートル)ほどしかない大きさです。発酵によく利用されるコウジカビの胞子は4~8ミクロンです。
コウジカビは、増殖するために養分の供給元となる≪何か≫を必要とします。発酵食品を作る場合、この≪何か≫として、例えば、蒸した米や麦、大豆が多く使われています。(これらにコウジカビを植えて増やしたものを、それぞれ米麹、麦麹、豆麹などと呼びます)コウジカビが増殖の際に分泌する酵素によって成分が分解され、出来上がった食品に甘味を与えたり旨みや風味を生じる素となっていくのです。
酵母
カビよりも小さく(4~8ミクロン)、形状はバラエティにとんでいます(球形、楕円形、卵形、レモン形、ソーセージ形、三角形、菌糸形状など)。
出芽酵母と呼ばれる酵母は果物の表面や樹液など、さまざまなところに生息しています。
酵母を使った発酵食品で代表的なのは酒です。酒は、酵母菌によるアルコール発酵を利用して作ります。酵母菌はグルコース(ブドウ糖)等の糖類を栄養源として増殖するのですが、自分ではデンプンを分解することができません。したがって、ワインのように酵母菌が直接利用できるブドウ糖などを含んだ原料から作られる場合以外は、別の手段で糖分を補給してやる必要があります。ビールのように麦芽に含まれるアミラーゼを利用するものや、日本酒のように他の微生物の助けを借りて酵母が利用できるようにデンプンを分解します。
細菌
カビよりもさらに小さく(4~8ミクロン)、分裂して増えていきます。増殖スピードはカビや酵母と比べると非常に速く、種類によっては数十分ごとに分裂を繰り返すものもあります。
発酵で活躍する代表的な細菌は、乳酸菌、酢酸菌、納豆菌等です。